私は月に2度、身体障害者の方と接する機会があります。
パソコンの指導をしに伺うのですが、私がそこではたくさんのことを教えてもらいます。
例えば、70歳近い男性の方です。
一生懸命パソコンを覚えようとなさり、いつもドキリとする鋭い質問を下さいます(*^_^*)
脳梗塞になって左半身が麻痺してしまい、その翌年に交通事故に遭ってしまった方のお話。
左側は動かなくても事故で右側を失わなかったのはとても幸いなことだ。
そしてなるべく自分で何でもしようと思っているんだ。
シャツを着る時はクリップに紐をくっつけてシャツに引っかけて右側でこうやって着るんだ。
そうすると30分位で着替える事ができるんだ。
「!!!」
下着を着替えるのに30分!?しかも毎日ですよ・・・。
なんてすごい方なのでしょう。
そして左側が動かないことを嘆くのではなく、右側があってよかった、幸いだ、とおっしゃるのです。
尊い教えを頂きました。
私なんか頭を剃るときにカミソリで少し切って血を見ただけで貧血になる!と、
もう大騒ぎですよ・・・。
情けないですね(+_+)
今あるこの身に感謝し、そして出来ることを精一杯されています。
五体満足の私が不満だらけで、とても情けない思いを致しました。
そしてまたそれとは別に、とても心に響くお話と出会うことができました。
是非ご紹介させて下さい。
ある女の子のお話。
あるところに若い夫婦がありました。
なかなか子供ができなくて、一生懸命子供が授かるように祈り、頑張りました。
そしてようやっと子供が授かり、玉のようなめんこい女の子が産れました。
その子を若い夫婦はそれはそれは可愛いがって育てたのだそうです。
あるときお母さんが気付きました。
他の同じ年の子はそろそろ喋れているのにうちの子は全然喋れないな・・・。
不安に思い病院に行きました。
そこで受けた診断は
脳性麻痺
だったのです。
若い夫婦は今まで以上に一生懸命女の子を可愛がり育てました。
夫婦は決して裕福という訳ではなかったので、共働をしていたのだそうです。
お母さんは仕事をし、家事をし、女の子を育て、きっと体も限界に来ていたのでしょう。
病気に倒れ、亡くなってしまいました。
そして残されたお父さんは
「この子は絶対に施設に預けない!!自分が育て上げるんだ!!!」
と固く決意し、男手ひとつで育てました。
しかし、仕事、家事、子育てこれらがやはり体を疲れさせお父さんも病気になってしまったのです。
そして、親戚などの強いアドバイスを受け、遂に施設にお願いすることを決意しました。
お父さんは病院から時間の許す限り電話をし、女の子とお話をしました。
そして体の許す日は施設を訪ね女の子に逢いに行きました。
そうして2人は時を過ごしたのです。
ある日施設で小銭の価値の勉強をしました。
先生が1円、5円、10円、50円、100円、500円と小銭を机の上に並べ、
「この中で一番価値のあるお金はどれですか?」
子どもたちへ聞きます。
すると子供たちは、
「500円~!!」
と答えます。
でも一人だけいつも
「10円」
と答える子供がいます。
その子供があの、女の子なのです。
「この中で一番大切なのは10円!」
先生が何回教えてもその子は500円ではなく10円が一番価値あるお金だと言い続けます。
どうしてなんだろう?
これは理由を聞いてみよう・・・。
と先生は女の子に
「どうしていっぱい物を買うことができる500円ではなくて、10円が大切なの?500円あるとお菓子もおもちゃもかえるのよ?どうして10円が大切なの?」
そうすると女の子は
「だってこの10円を公衆電話に入れると、お父さんとお話しすることができるんだもん!」
「この10円だけが大好きなお父さんの声を聞くことができるの。」
といったそうです。
先生は
「はっ」
と気付かされました。
本当に本当に500円のほうが価値あるお金なのだろうか。
大好きな大好きなお父さんとを繋ぐ10円のほうが価値のあるお金ではないのだろうか。
その女の子は大好きなお父さんの声を聞ける10円がたくさんの物を買うことのできる500円よりも価値があるのです。
つい、私たちは本当に価値あるものを見逃してしまう。
それは大衆の価値観に流されてしまうから。
物欲に目がくらみ、本当に必要ではないものばかり求めてしまうから。
そして、本当に大切なものに気付かずに生きてしまっているから。
私は女の子に教えてもらいました。
欲に目がくらみ煩悩だらけの自分という存在を。
お父さんの声が聞ける10円を最高に価値のあるものだという。
大好きなお父さんの声を聞くことができるだけで最高の幸せなのでしょう。
私という人間はいったい何なのかな?
周りの人が良い物を持っているとつい自分もほしくなる。
周りの人が悪口を言っていると悪い人なのだと思い込んでしまう。
一万円をたくさん欲しくなってしまう。
恵まれた環境にありながら足りることを知らず求め続けてしまう。
私は女の子のように満たされることを知らぬままに生きてしてしまったのだと気付かされました。
御釈迦様の教えに私がとてもとても大切にしている言葉があります。
「小欲知足」
欲を少なくして足ることを知る
あれもこれもと欲があるから悩むのです。
もっともっとと足ることを知らないから嘆くのです。
そう、私という人間は、誰でもない、自らで自らを苦しめていたのです。
本当に価値あるものを自分の心に持し、生きていきたい。
私も女の子のように自分にとって本当のものを大切にして生きていきたい。
教えて下さって、本当にありがとうございます。
心より感謝申し上げます。
合掌
― ラビンドラナート・タゴール「果物採集」より ―
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